心と経営の力学 【No.8】 5S導入で躓かないための5つのポイント②「基準を作る」
前回、5S導入にあたっての最初のポイントとして「要らないモノを徹底して捨てる」重要性について説明しました。
モノを捨てるというのは、想像以上に大きなエネルギーを伴います。思い入れのあるモノだったり、まだ使えるモノだったり、するとなおさらです。また、捨てる際に罪悪感や後悔を伴うこともあります。
経済的な損失に加え、こうした心理的な負担も重なる「捨てるという行為」を、個々の社員に委ねれば、何らかの理由(言い訳け)を付けながら殆どモノが捨てられなくなるのは至極当然のことです。
このため、捨てるを徹底できずに5Sの導入で躓く会社が多いのですが、その打開策として有効となるのが社内共通の基準を作ることです。
この基準は、使用頻度と、モノの状態に合わせ、「不用品」「不急品」「必要品」の3つに区分します。例えば、次ようなかたちです。
【基準例】
1)不用品
・1年以上使用していないモノ
・壊れたり、古くなって使えないモノ
2)不急品
・半年に1度使うか使わないモノ
・必要以上に数量があるモノ
・設備のスペアーパーツ
3)必要品
・日常的に使うモノ
・3ヶ月に1度以上使うモノ
なお使用頻度は、事業特性や生産サイクル等の状況に合わせて設定し直しても構いませんが、どんなに長くても「3年以上使用していない」のであれば、「不用品」とした方がよいでしょう。
また、ここで重要な点が2つあります。1つ目は、各部門や製品毎の個別事情に合わせて複数のパターンを作らないこと、2つ目が、特殊事情を考慮して例外を作らないことです。一度、複数のパターンや例外を作りだすと、ルールがどんどん複雑化してきます。この結果、ルールを覚えきれなくなり、社内の共通ルールとして徹底する事が難しくなります。このため、原則は7割~8割をカバーできそうな基準を、先ずは1つ決めてください。
シンプルで明確な基準であればあるほど、全社員の「捨てる判断基準」の認識が統一されます。また、会社が決めたルールに従うかたちでモノを捨てることになるので、心理的負担も軽減されます。
もし、それでも捨てる行為にまだ抵抗感を示す社員が多ければ、先ずは捨て易いモノに絞って整理するとよいでしょう。例えば、「ダンボール」「カタログ」等がお勧めです。比較的安価で、必要になった時に再入手が簡単に出来るので、これらのモノを捨てるのを躊躇う社員は殆どいません。
一方で「さまざまな事情がいろいろあって、そんな一律の基準なんて決められない」という意見が出ることもあります。その場合の対処方法については、次回ご紹介しますので、先ずは、原則となる基準を1つ決めてみてください。