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心と経営の力学 【No.28】 「層別」で解決!! 十把一絡では社内は動かない。

前回に引き続き、今回のコラムでも新型コロナウィルスの対応を例に挙げながら、日常の会社内の活動を振り返る機会にしたいと思います。

そこで、政府を「社長」、各都道府県知事や自治体トップを「部課長」に見立てます。

3月下旬に政府(社長)は、「4月以降の学校再開やその他の対応について、各都道府県(部長)の判断に任せる」としました。

これは、会社の中でもよく見られるシーンですよね。しかも、対処すべき問題も明らかになっています。しかし、任せられた現場からは、一斉に不安と混乱を案じる声があがりました。

何故だと思われますか?・・・

そうです。
 具体的な判断の方針が示されなかったのです。
 このため「現況をどう正しく捉えればよいのか?」「どうすれば妥当な判断が下せるのか?」「より安全に運営できるのか?」・・・等を、具体的に検討できなかったのです。

その後、1週間ほど経った4月1日になって、政府(社長)が各都道府県(部長)に、次の指標を示したことで、ようやく各都道府県(部長)は具体的な行動に踏み出すことができました。
 

この件については、皆さんから見ても「最初の指示が不十分で、これでは指示を受けた側が具体的な行動に踏み出せないのは明らかだ!」と思われるでしょう。

一方、自社の活動を振返った時に、同様のやり方で部長や課長に指示を出していないでしょうか?そして「ちっとも依頼した通りに動いてくれない」と嘆いている、なんて事はないでしょうか?

社長は、部下を行動に駆り立てるために、なぜやるか?「Why」と、何を対象とするか?「What」と、どのように解決するか?「How」の3点をセットで伝える必要があります。
「How」について事細かに示す必要はありませんが、その指針は明確にする必要があります。

それでは、指針はどのように示せばよいのでしょうか?

幾つか方法はありますが、指示を受けた側が理解しやすく具体的な行動を起こしやすいのは、今回の件で政府から提示したように、層別(表)にすることです。
すなわち「Aのケースでは〇〇」、「Bのケースでは△△」、「Cのケースでは□□」といったように、全体を幾つかの層に分けてから、各層毎に方針や施策を示します。

層別すること、すなわち分けて考えることで、対処方法を具体的に考えやすくなります。方針を示しやすくなります。また、関係者間での議論もしやすくなります。

ここで、例を紹介します。
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 精密部品メーカーK社では、リードタイム短縮による在庫削減に取り組んでいましたが、品種が1,000機種以上に及ぶこともあって、実際の対策がなかなか進展しない状況でした。

このような状況下で、皆さんならどうするでしょうか?

ビジネスの鉄則は、「儲かっている製品」、あるいはこの先「儲かるポテンシャルが大きい製品」を優先するということになります。なお、これらの対象製品は、それを購入する顧客側のビジネスにとってもインパクトが大きいハズなので、妥当な判断と言えます。
 仮に皆さんが仕入れ販売している小売業だとして、月1,000個(100万円)売れている製品と、月100個(10万円)売れている製品の、どちらの入荷が遅れたり欠品すると、より困ることになるか?を考えれば、容易に想像がつくと思います。

話しを戻します。そこでK社では、「売上金額」と「在庫金額」、「在庫回転期間」の3つのデータから、全製品をA、B、Cの3つに層別し、各層別の対応を具体的に考えていきました。そして、最終的には、層別ごとに標準リードタイムと標準在庫量を設定し、顧客にも納得してもらいました。

経営者である皆さんから見れば、当たり前と言えば、当たり前の対応に映るかもしれません。しかし、実際に同様の問題を解決できない会社が数多く見受けられます。

その理由は、経営者と現場サイドで優先事項にズレがあるからです。

一般的に、営業や製造の現場では顧客の要求納期通りに納品すること、あるいは効率的に生産するコトを最優先して考えます。また、それを必死で守ろうと努力します。これは素晴らしいことですが、全ての製品に対しこの対応が出来ないために問題が生じている事を忘れてはいけません。このため、現場では「依頼を受けた順番」「生産しやすい順番」「段取り替えしやすい順番」・・・等の尤もらしい理由を持って優先順位付けされることになります。

一方、経営者の立場から見ればビジネス上のインパクトをもとに優先順位を決めるのが当然と考えるでしょう。

こうして、経営者と現場サイドの優先順位にギャップが生じることになります。そして、経営者が具体的に現場に指針を示さないかぎり、なかなか問題解決が進まないという事態に陥ります。

またこの他、アパレルメーカーH社の在庫商品の取扱いや、金属加工会社L社の事業の棚卸しでも、層別して考えることによって、これまで進展が図れなかった問題が、一気に解決に向かったという事例があります。
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如何でしたでしょうか?

目の前にある問題の解決方法や、進むべき方向性を検討する時に、十把一絡げで扱うのではなく、この層別して考えるという視点は役立つことが多いと思います。

ぜひ試してみてください。

さて最後に、今回のコロナウィルスは、間違いなく世界に大きな変化を巻き起こします。

ここでの詳細説明は控えますが、「2008年のリーマンショック以降、4割以上も膨らみ続ける各国の金融債務(2京7,000兆円)」、「実質的にそのお金を貸している人たち」、「昨年10月に米国で開催されたパンデミックシュミレーション会議 "Event201"」、そして既存の社会構造を問題視して対抗している勢力・・・等々の事実をもとに総合的に考えると、今世界で起きている問題はとても根が深いように感じます。もしかすると、これまでの経済の仕組みや勢力図、消費者の意識が、一旦リセットされるぐらいの覚悟を持っておいた方がよいかもしれません。

そのためにも、この機会にしっかり層別して考え、当社にとって本当に必要なモノは何か、早めに見極めていきましょう。