心と経営の力学 【No.3】 5Sの本質とは(行動様式を変えて業績を上げる)
はじめて訪問する会社で必ずチェックするポイントが3つあります。先ずは、「玄関先」で特に上の方です。次が「下駄箱」。最後にタイミングを見て「トイレ」をチェックします。
なぜなら、この3箇所の状態が、その会社の業績をほぼ忠実に現わしていることが多いからです。
具体的には、例えば「玄関先」なら玄関口や入口が綺麗でも上の方はクモの巣が張っていたり埃が溜まっている。下駄箱は、下履きと上履きを置くところが一緒だったり、不揃いだったりする。「トイレ」は、桟の上に埃が溜まっていたり、使い切ったトイレットペーパーの芯がそのまま置かれている...等です。
こういう細かいところまで綺麗な会社は、組織の方針が明確に定まっており、組織を動かす仕組みも出来ています。よって業績もよい企業が殆どです。
一方、あまり綺麗でない会社は、組織に纏まりがなく、仕組みもあまり整備されていません。逆を言えば、それだけカイゼンの余地や伸びしろがあります。
そのメカニズムについては機会をみて詳しく書きますが、簡単に言えば、社長や社員の思考や態度が、そのような状態を作り出しているからです。当然、業務の隅々にもそれが現れますから、その結果である業績に影響を与えるのは至極当然です。
この思考や態度を変える有効な手段のひとつが「5S」なのです。
「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「習慣・作法(Syukan)」の頭文字をとって「5S」と呼んでいますが、5Sは単に会社を綺麗にする活動ではありません。
誰もが簡単に取り組める「整理」「整頓」「清掃」という行動を通じて、会社が決めた方針や職場で決めた事に全社一丸となって取り組む組織風土を作り、強いてはそれを業績に繋げていく状態を創り出すところにその本質があります。
ポイントは誰でも簡単にできる活動を徹底してやることです。
有名な哲学者のウィリアム・ジェイムズの言葉に、「心が変われば行動が変わる、行動が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人格が変わる、人格が変われば運命が変わる」というものがあります。
5Sの場合、心(思考)を変えるのは大変だし時間もかかるので、まずは「整理・整頓・清掃活動を通して組織の行動習慣を変え、習慣が変わることで社員の意識が変わり、社員の意識が変わることで業績がよくなる。その過程で、また社員の思考や態度も変わっていく」ということになります。あとは習慣化されるまで、諦めずに続けることです。
「玄関先」「下駄箱」「トイレ」をチェックして、前述のような状態があれば業績をあげるチャンスです。
貴社では、組織の行動様式を変えるための取り組みを何かしていますか?