心と経営の力学 【No.12】 5S導入で躓かないための5つのポイント⑤「経営幹部の率先垂範」
前回、5S導入で躓かない4つ目のポイントとして「導入期の活動頻度を高める」重要性を説明しました。
本シリーズの最終回となる今回は、5S活動に対する社員のスイッチを入れるために、最も大切となる「経営幹部の率先垂範」について説明します。
日常業務においても、社員によって業務に取組む姿勢や主体性は大きく異なると思いますが、一見業務に直結しないように感じる5S活動を導入する際は、さらにその差が顕著にでます。
特に男性は、自宅でも整理したり、掃除したり、する場面が少ないので、この傾向が強くなります。正直言って「いやいや」活動する社員の方が多いぐらいです。
しかし、これはある意味素直な感情であり、それを悪いと思ったり、態度が消極的だ、と批判しても仕方がありません。このような状況を打開して、社員のやる気スイッチを入れる方法として最適なのが「経営幹部の率先垂範」です。
このため、当社が5S導入を支援させていただく場合、「社長の机の上や棚、周辺が、誰れが見ても文句なしに "一番スッキリした" "一番変化している" と、思える状態にしてください」とお伝えしています。
もし、既に社長の周りは綺麗だということであれば、社内の共有スペースでも構いません。とにかく、経営幹部が活動した結果、誰が見ても一見して違いが分かるレベルまで変化させる事が重要です。
実例を幾つかご紹介します。
A社では、専務(女性)が土日をかけて、全ての男性トイレをピッカ、ピッカに磨きました。社員はもちろん、私も含めた社外の人が見ても、その差は歴然でした。それを境に、5Sに消極的だった男性社員が積極的に参加するようになりました。また、トイレ掃除は当番制となり、一年経った今でも、綺麗な状態を維持しています。
B社の社長は、出張が多く5S活動になかなか参加できない状況でした。加えて社長室はモノで溢れており、お世辞にも綺麗とは言えませんでした。こんな状況ですから、いくら「積極的に不用品を処分してください」「5S活動に参加してください」と社長が指示しても、社員は「何言ってんだ、社長の部屋が一番汚れているじゃないか」といった雰囲気で、5S活動が今一つ積極的に推進されませんでした。
そこで、社長が会社の夏休みを利用して社長室を一気に整理しました。5割以上のモノがなくなり、見違えるほど綺麗になりました。こうなると、やはり社員の活動も活発化してきます。
職場で決めた活動時間以外にも空き時間を使って整理をしたり、「これって今後使うかなぁ?」と社員間での会話が増えたり、とこれまでには見られなかった積極性・主体性が社員に生まれてきました。
松下 幸之助も「頭が回らなければ、尾はついてこない」と言っています。正にその通りで、面倒なこと、大変なこと、であればあるほど、経営幹部が率先垂範しない限り、社員はついてきません。
社員が「今一つ5S活動に積極的でない」と感じたら、社長ご自身の周囲や、活動への参加度を振り返ってみてください。もし、文句なしに「自分の周りが一番きれい」「自分が最も活動している」というレベルに達していなければ、まだ社員のスイッチを入れる余地は残っています。ぜひ、試してみてください。