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心と経営の力学 【No.26】 ブレない判断基準を持つために、絶対に社内で共有すべき〇〇とは?

生産性を高めるために、社内で絶対に共有すべき事があります。
 全ての業務・組織活動がこれに帰結すると言っても過言ではありません。

何かお分かりでしょうか?

それは、顧客とその顧客に提供する価値です。
もう少し平たく言うと、どんな欲求をもった顧客に、どのような特色のある商品やサービスを提供して、喜んでもらうか、です。

これが社内で共有できていないと、価値判断の基準が曖昧になり、担当者や、その時の状況・感情によって判断のブレが大きくなります。

例えば、少しお腹が空いたので駅の「立ち喰いそば屋」に入ることを想像してみてください。

皆さんが顧客の立場で期待することは何でしょうか?

おそらく、「蕎麦の香り」「ダシの風味」「店の雰囲気」を、どうこう気にする方は少ないと思います。
 一方で、食券を出してから蕎麦が提供されるまで3分を超えたらイライラして、不満を持つでしょう。また、何もトッピングしていない「かけそば」が500円を超えていたら高いと思うでしょう。

このように感じるのは、皆さんの中に「立ち喰いそば屋」に対し、「リーズナブルな価格で、短時間に、小腹を満たしてくれる食べ物」という期待値があるからです。それ以上は期待しないし、逆にその期待が満足されない場合は不満を持つことになります。

他方、店側は顧客のこの期待に応えるべく、食材の品質、業務内容、業務オペレーション、人員配置、教育内容・・・を最適に決めていきます。

なお、蕎麦・うどん屋は、200円~300円で食べられる「立ち喰いそば屋」のような業態から、10,000円近くする懐石料理屋のような業態まで、非常に幅広いバリエーションがあります。
 当然、後者の業態のお店では、顧客の期待値が変わるので、立ち喰い蕎麦屋とは異なる、食材の品質、業務内容、業務オペレーション、人員配置、教育内容・・・が必要となります。

ここで、皆さんの事業において、明確に顧客を設定できていない。もしくは、全社的に共有されていない状態で、「調達する材料の品質レベル」や「社内の管理レベル」、「顧客からのクレーム対応」・・・等について議論し、判断することを考えてみて下さい。

適切な議論を行い、適切な結論を導くことができるでしょうか?社長に、その都度確認しなくても、管理者や社員だけで適切な判断が出来るでしょうか?・・・もしくは、顧客が設定されている場合と、設定されていない場合、どちらが最適な行動やオペレーションを設定しやすいでしょうか?

答えは、火を見るよりも明らかですよね。

このため、生産性の向上を目指すのであれば、顧客の設定と、その顧客に提供する価値は必ず明確に設定し、社内で共有する必要があります。また、顧客に対しても提供する価値を明示し、期待値をコントロールする必要があります。
 そうしないと、適正オペレーションはおろか、適正価格も設定できないことになります。

以前のコラム、【No.17】『生産性を高めるに、絶対に社内で共有すべき「ムダ」の概念』の中で、「顧客にとってのムダ」を最小化する重要性についてお話ししましたが、自社の顧客と、提供する価値を明確に定めていないと、このムダ取りの活動もなかなか進められません。

ここで、1つ事例を紹介します。
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加工食品を生産しているL社で、異物の除去作業とその検査にどの程度の人員と検査工数をかけるか議論したことがありました。もちろん、異物がないにこした事はありませんが、原材料に農作物を使っているため完全にゼロにすることはできません。明確に定義している食品規格もないため「2mm以下であればよいのか?」「1mm以下にする必要があるのか?」もっと突き詰めて「0.5mm以下にする必要があるのか?」・・・議論がなかなか収束しません。
 また、顧客も個人飲食店から医療給食会社まで幅広いため、結論を出すにも妥当な判断基準を設定できません。
 最終的には類似食品の状況や、リスク分析を行い、何とか結論を出しましたが、顧客の設定と提供する価値を明確に定めていれば、もっと早く結論が出せたと思われます。

なお、提供する商品が同じでも、顧客によってサービスの提供レベルや品質レベル、管理レベルを分けて、提供する価値と価格を変えているモノも世の中には多くあります。
 例えば、印刷業界やプリント基板業界は、古くから対応納期によって、価格を明確に分けています。また、電子部品の中には「医療機・航空機・自動車用」と「汎用機械用」で、検査内容や管理レベルを変えて価格を1.5倍~3倍変えているモノもあります。「トヨタ」と「レクサス」も同様ですね。

ちなみに同じ麺業界でも、ラーメン業界の市場規模が4,000億円であるのに対し、蕎麦・うどん業界は業態が広いため市場規模が1.3兆円(約3倍)あります。顧客ニーズをうまく汲み取り、市場を創造してきた業界とも言えるでしょう。

もし直ぐに顧客を絞り切れない場合は、このように顧客ニーズを層別して、マーケティングも兼ねて幾つか試行してみるとよいでしょう。
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最後に、ドラッカーも、「組織を具体的な行動に導き成果をあげるための5つの重要の質問」の中で、次のように語っています。
「Q2.われわれの顧客は誰か? “A2.成果をあげるためには、活動対象としての顧客に焦点を絞る”」と、「Q3.顧客にとっての価値は何か? “A3.顧客にとってのニーズ、欲求、期待は、顧客本人にしか答えられない”」

生産性を上げるには、やはりこの質問の答えを追究し、明確に設定する必要がありそうです。

貴社では、顧客とその顧客に提供する価値を明確に設定しているでしょうか?