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心と経営の力学 【No.27】 緊急事態宣言にみる、リーダーとしての役割

昨日(4/7)、日本においても新型コロナウィルスの感染拡大防止に向けた「緊急事態宣言」が出されました。
 海外のような完全な都市封鎖(ロックダウン)ではないものの、対象となった都道府県はもちろん、国民全体にとてっも非常に大きなインパクトを与えることになるでしょう。

さて、3ヶ月前には誰も予想だにしなかった、世界規模の未曾有の出来事を通じ、各国リーダーの発言や対応に注目されている方も多いと思います。私もその一人ですが、あらためてリーダーの重要性を感じています。

今回のコラムでは、最近気になった出来事も交えながら、あらためて経営者のリーダーとしての役割についてお話ししたいと思います。

リーダーには様々な役割がありますが、とりわけ有事の時に重要となるのが次の3つです。

1.向かう方向を正しく伝える
 2.リスクを予測して先回りして対処する
 3.関係者を勇気づける

それでは、1つずつ内容を見ていきましょう。

 1.向かう方向を正しく伝える

未知のこと、未来のことに関して、方向性が明確に示され、そして伝えらない場合、人は大きく分けて次の何れかの行動を選択します。
 1つ目は、自分がよかれと思う行動をとる。
 2つ目は、不安を感じ動かなくなる。

各自が何れの行動を選択するにしろ、本来なら目的達成に向けて1つの方向に力を結集したいところ、明確な方向が正しく伝えられないがために同調行動がとれなくなります。

今回のコロナウィルスの例で言えば、外出自粛要請をしたにも関わらず、残念ながら伝わり方が不十分であったために、要請に従った人たちと、若者を中心に要請に従わず普段通りの行動をした人たちに分かれてしまいました。米国の爆発的な感染拡大と、東京のここ数日の感染拡大は、この行動の2分によるところが大きいと考えられます。
 なお、同様のことは、どんな企業、組織においても起こりえます。

それでは、どのように伝えればよいのでしょうか?

人を行動に駆り立てるには、2つの要素が必要です。「誰が言うか」と「何を言うか」です。

「誰が言うか」については、同じ言葉でも、信頼している人から言われる事と、そうでもない人から言われるのでは、受け止める重みが変わります。
 例えば、「十回やれば、九回失敗している」という言葉を、中学生に言われるのと、実際にこれを語ったユニクロの柳井氏から言われるのでは、言葉の重みが全く異なります。

同様に、内容によっては社長から直接伝えられる場合と、課長から言われるのでは、社員の受け止め方が変わってきます。そうした事を考えると、重要な内容、大事な局面では、社長が直接社員に語る、あるいは文章で示す必要があります。

「何を言うか」については、内容の納得性が重要になります。なぜ、それを行う必要があるのか(理由)と、その行動を通して何が得られるのか(結果)がセットになっている必要があります。

以上を踏まえ、本項の纏めとして「リーダーが向かう方向を正しく伝える」ことの重要性を分りやすく説明している例を、全世界で3,000万部の大ベストセラーとなった「7つの習慣」より紹介します。

=== 7つの習慣より === 
 例えば、ジャングルの中で手斧を持って道を切り開いている作業チームのメンバーは生産者(プレイヤー)であり、直接に問題を解決しようとする人たちである。

マネジャーたちはその後方に立ち、手斧を研いだり、方針や手順のマニュアルをつくったり、筋肉強化のプログラムを開発したり、新しい技術を導入したり、スケジュールを組んだり、作業員の賃金体系をつくったりする。

では、リーダーとはどういうことをする人だろうか。それは、ジャングルの中で一番高い木に登り、全体を見渡して、下に向かって「このジャングルは違うぞ」と叫ぶ人なのである。
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 2.リスクを予想して先回りして対処する

新型コロナウィルスの感染者数が、国によって大きく違うことはご存知だと思いますが、もう一つ着目したいのが、死亡率の違いです。
 適当なデータがなかったので、4/6正午に厚労省が発表した数値をもとに比較しました。
 これを見て気になるのがドイツの死亡率です。感染者数は10万人を超え世界で4番目に多い状況ですが、死亡率は最も低い水準の1.6%に留まっています。

ドイツではいち早く、検査体制の整備や人口呼吸器の確保をはじめました。なお、現時点で治療で使用している人口呼吸器が1万個であるのに対し、約3万個まで確保できているそうです。
 これは、ドイツには「シーメンス」「ビー・ブラウン」「フレゼニウス」等の世界有数の医療機器メーカーが多いことにも関係していると思われます。しかし、さらに大きな効果を与えているのは、専門家の意見を聴きながら早期の判断を適切に下している、メンケル首相のリーダーシップにあると思われます。

普段からリーダーにはリスク管理能力が問われますが、特にこうした非常時には、最悪の事態を想定して、今取りうる最高・最大の準備とは何かを考え、可能なものからどんどん行動することが求められます。

ちなみに、日本の政策について異議を唱えている人も多いですが、下のグラフで各国の感染者数を比較するところ、現在まで感染拡大を比較的うまく制御出来ているように感じます。

 3.関係者を勇気づける

細胞学の研究から、人間の成長・活動行動と、防御行動はスイッチの関係になっていて、両者は同時に発動できない、ことが分かっています。

 特に、今回のような未知の事柄に対しては、生命を維持するため防御行動のスイッチが入りやすくなります。ある意味、健全と言えば健全ですが、それが長続きするとストレスを感じて委縮をはじめます。
 このため、リーダーは前述の1項と2項をしっかり説明した上で、関係者を励ます、勇気づける必要があります。

こうした観点からも、ドイツのメンケル首相は素晴らしリーダーシップを発揮しています。
 参考に、2020年3月20日の国民に向けたメッセージをご紹介します。

=== メンケル首相 メッセージ(抜粋) ===

コロナウイルスは現在わが国の生活を劇的に変化させています。私たちが考える日常や公的生活、社会的な付き合い ― こうしたものすべてがかつてないほど試されています。

何百万人という方々が出勤できず、子どもたちは学校あるいはまた保育所に行けず、劇場や映画館やお店は閉まっています。そして何よりも困難なことはおそらく、いつもなら当たり前の触れ合いがなくなっているということでしょう。もちろんこのような状況で私たちはみな、これからどうなるのか疑問や心配事でいっぱいです。

私は今日このような通常とは違った方法で皆様に話しかけています。それは、この状況で連邦首相としての私を、そして連邦政府の同僚たちを何が導いているのかを皆様にお伝えしたいからです。開かれた民主主義に必要なことは、私たちが政治的決断を透明にし、説明すること、私たちの行動の根拠をできる限り示して、それを伝達することで、理解を得られるようにすることです。

もし、市民の皆さんがこの課題を自分の課題として理解すれば、私たちはこれを乗り越えられると固く信じています。このため次のことを言わせてください。事態は深刻です。あなたも真剣に考えてください。東西ドイツ統一以来、いいえ、第二次世界大戦以来、これほど市民による一致団結した行動が重要になるような課題がわが国に降りかかってきたことはありませんでした。

・・・・ ※全文はこちらをご覧ください。
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ここまで、リーダーに求められる役割をみてきましたが、如何でしたでしょうか?

経営者の皆様にとって、このようなリーダーシップは日常の会社運営にあたっても、各シーンに応じて絶対に必要となります。
 特に今回のような、緊急事態が起きている時にはなおさらです。

ぜひ、素晴らしいリーダーシップを発揮され、この困難を乗り切ってください。
 その先には、絶対に新たな世界が待っています。