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心と経営の力学 【No.39】 当社の魅力や実力を顧客に伝える、効果的な方法とは?

 先週、顧客に同行し、ある工業製品において国内トップシェア、世界でもシェア2位という企業の工場見学をさせてもらいました。

工場内は、とても明るく綺麗で、また行き交う社員も例外なく全員が気持ちよく挨拶してくれます。どの職場を見ても、これまで見てきた企業の中でトップ5に入るレベルで、整理・整頓や社員教育が行き届いていました。
 なかでも驚いたのは、機械工場のレベルです。切削用の加工機が50台ほど置かれていましたが、床はオフィス並みにピカピカ、油の匂いも全くと言っていいほどありません。また、新しい/古いに関係なく、どの加工機の本体も油じみ1つなくピカピカに磨かれています。何人かの女性が加工機を動かしていましたが、こうした職場環境ですから、作業員というより事務員がパソコンやオフィス機器を操作しているのに近い印象を受けます。

久しぶりに、その企業の凄さや素晴らしさが滲み出ている職場を見せてもらいましたが、何でも、現会長がかなりの拘りを持って5Sを推進しているとの事で、納得しました。

もし、私がこの企業との取引きを検討している会社の経営者や購買部長であれば、間違いなくゴーサインを出すだろうな、と感じると同時に「工場はトップセールスマン」である事をあらためて強く認識しました。

少し話は変わりますが、皆さん行きつけのお店ってありますか?

例えば、お昼を食べに行く「ラーメン屋」や「定食屋」・・・、気心の知れた仲間といく「居酒屋」や「バー」・・、もう何年も通っている「床屋」や「美容室」・・・等々、少なくとも45箇所はあると思います。

他方、そのお店に行くきっかけは、電話やハガキといった誘いがなくても、殆どの場合は皆さん側から出向きますよね。

それでは、なぜそのお店に行くのでしょうか?

おそらく「何時もの味」「何時もの店長/店員さん」「何時もの雰囲気」、「何時もの○○」・・を体験したくなったからこそ、そのお店に足が向くのだと思います。

ですから、「何時もより味が薄い/濃い」、「何時もより店がガヤガヤしている」、「何時もより待たされる」・・・等、思い描いていた「何時もの○○」という期待が満たされなければ、当然不満を感じます。

他方、ビジネスにおいても、継続取引きする場合、顧客は当然「何時もの○○」を期待します。「何時もの性能」「何時もの寸法」「何時もの納期」「何時もの価格」・・・
 この「期待値」を別の言い方で表すと「品質」と呼びます。この品質のバラツキが小さいほど、顧客は「もしかしたら期待が満たされないかも?」という不安が減るので、安心して取引きができます。

一方、すでに何度か取引きした相手であれば、相手が今度もこちら側の期待に応えられそうか、ある程度判断できますが、初めての相手の場合は難しいものがありますよね。

簡単な取引きであれば、「先ずは1回試してみよう」という事になるかもしれませんが、重要な取引きの場合はそうもいきません。このため、実績や他の顧客の声をよく調べて判断することもあるでしょう。また、それだけでは不十分で、もっと手応えや確証が欲しい場面もあるでしょう。

そんな時に、取引してよい相手か最もよい判断材料になるのは、その商品やサービスが生み出される職場を見ることです

L社の社長は、新規顧客からの引合いがあると、必ず工場見学を勧めます。私が前職で勤務していた会社も同じでした。

理由は「工場はトップセールスマン」だからです。

工場は、その企業の実態を如実に表します。

工場の周囲や玄関、トイレ、掲示板を見れば、その会社の品質に対する姿勢が分かります。社員の身なりや受け答えのレベルから教育・躾けの程度が分かります。机の周辺や資材置き場を見れば、どの程度組織的に業務が進められているかが分かります。・・・
 そして何よりも、それら一連の状態から経営者の姿勢というのが判断できます。

WEB」「会社案内」「商品カタログ」「プレゼン資料」・・・等による情報発信は、ある程度効果的ですが、全てを伝えることはできません。一方で、取り繕うことも出来ちゃいます。しかし、職場はその企業の真実を見せてくれます。

だからこそ、自信のある経営者は、どんどん顧客を工場に招待します。それに応え、見識の高い顧客は職場を見て、自分の期待に応えられる実力がありそうか、あるいはその素養がありそうか判断します。

松下 幸之助の講演録の中で、こんな逸話が紹介されていました。
 ある商品が不良になり、相手先の経営者がスゴイ勢いで工場に怒鳴り込んできましたが、現場の社員たちの仕事に対する姿勢を見て穏やかな顔に戻られ「これからもよろしくお願いします」と、帰っていったそうです。

文化(職場や会社の姿勢)が、文明(よい商品やサービス)を育むのであって、文明から文化が築かれることはありません。これは、長い歴史を見ても明らかで、文明だけが独り歩きを始めると、途端にその文明は衰退していきます。
 持続的な繁栄には文化と文明の両方が必要なのです。だからこそ、組織の文化を高める活動がどうしても必要となります。具体的に、どう高めていくかについては、またあらためてご紹介します。

最後の質問です。
 貴社では、自信を持って顧客を招待できる職場を築けていますか?