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心と経営の力学 【No.40】 データから読み解く、今後のコロナ対応(その1)

当社では、現時点で先の状況が見通せないクラアントに対し、次の3つの対応を勧めています。

A:借入を(利息補填がある今のうちに)増やすこと。※但し、あくまで保険なので出来るだけ使わずに事業を回すこと。

B:徹底的した生産性の向上とコスト削減により、既存事業の利益率を高めること。

C:今後の市場の変化、次代の変化を捉えて、あらたな事業モデルを構築すること。

新型コロナが、消費者心理の変化と、経済に与えたダメージは計り知れません。これらの状況を踏まえると、今後さらに世の中が大きく変化していくこと、また長期にわたり不況が続くことが想定されます。このため、先のような提言しているわけですが、もう少し詳しく説明します。

1. 消費者心理の変化
 「コロナは怖い」「コロナだからしょうがない」という、社会意識がすっかり定着しました。その結果、今ではどんなに暑くてもマスクをすることや、できるだけ直接人と会うのを避けることが常態化してしまいました。

ちなみに、高校野球が前回中止になったのは第2次世界大戦が起きた1941年、同様にオリンピックが中止されたのも第2次世界大戦の時です。(しかも、1940年の中止は「東京オリンピック」でした)
 また、これに続くように、「日本のプロ野球」「アメリカ大リーグ」「NBA」「ヨーロッパのサッカーリーグ」・・・等の開幕が相次いで延期され、当たり前にあった日常がすっかり様変わりしたことで、消費者心理の変化を強力に後押ししました。

こうした消費者心理の変化は、事業上はメリットもデメリットももたらします。

メリットについては、生活様式や考え方が大きく変わったことで、あらたな商機が出てきたことです。自社の事業の強みとそれらのチャンスをうまく融合することで、あらたなビジネスを展開しやすい環境になっています。

デメリットについては、消費者が大きな不安にかられ、冷静な判断や行動を出来ない人が増えたことです。このため、秋以降さらに陽性者数が増加し、景気低迷に拍車をかける懸念が出てきました。
 というのも、8月末に政府は「新型コロナ拡大に備えた対策パッケージ」を発表しましたが、その中の1つに「PCR検査体制を秋までに120万件体制に整備する」という対策があります。現在のPCRの検査数が12万件~2.5万件なので、最大で検査数が8倍~10倍増えることになります。
 一方、これまでの厚生労働省のデータを見ると、検査数と陽性者数はほぼ比例関係にあって平均5%の陽性率です。つまり、検査数を増やせば、その分陽性者数も増加することになます。いまのところ感染が疑われる人や高齢者を中心に検査数を増やす方針のようようですが、状況によって11月以降は今より最大で8倍~10倍陽性者が増えることになるかもしれません。
 そう言われても、ニュースや新聞で伝えられるのは殆どが感染者数(正しく表現すれば陽性者数)の増減だけなのであまりピンとこないかもしれませんが、以下の様に現状の検査数と陽性者数を重ねてグラフにすると、その可能性が高まることが容易に想像できると思います。
 ちなみに、PCR検査は唾液や粘膜を採取して行う検査なので、一度感染して抗体ができた人や、暴露だけ(体内に入っただけ)で感染せずに自然免疫によって治った人でも、再びウイルスが体内入ることは十分にあり、そのタイミングで検査すれば結果は陽性になります。 

他方、マスコミがしきりに「再び感染者が急増」と報道していた7月末~8月上旬の状況下でも死亡者は殆ど増えていないことが分かります。なお、新型コロナの死亡者は8/31時点で1,295人(一日平均6.6人)ですが、7月末に東京都福祉保健局が発表した分析結果によれば死亡者のうち97%の人が他の基礎疾患(糖尿病、高血圧、腎疾患など)を持っていたと推定されます。この点を考慮すれば、純粋にコロナだけが原因で亡くなった人は40人程度です。
 なお、同様に米国では死亡者のうち94%イタリアでは96%の人が別の基礎疾患を持っていたことが発表されていますので、他の国においても純粋なコロナの死亡者は公表値に対し大幅に少なくなります。

さらに死亡者の殆どが高齢で、8割が70歳以上です。ちなみに2018年のインフルエンザによる国内の死亡者数は3,325人、肺炎で亡くなった人は94.5万人(一日平均260人)ですから、冷静にみれば病気としてのコロナの危険度がいかに低いか、分かると思います。

しかし、一旦拡がった不安はなかなか払拭できません。また、一度定着した社会意識もなかなか変わりません。もし11月以降、陽性者数が爆発的に増えるようなことになれば、自社のビジネスにも大きな制約や影響が出ることは避けられません。

なお、「こうした状況に対する切り札が世界各国で今盛んに開発されているワクチンだ」という認識をお持ちの方も多いと思います。また、実際に政府の対策パッケージにも「2021年前半までに、全国民分のワクチンを確保する」ことが盛り込まれています。しかし、現状を正しく捉えれば、現時点でのワクチン投与はあまりにもリスクが高く、すぐに抜本的な対策になるとは考えにくい状況です。これについては、またあらためて紹介したいと思います。

とにかく、現在はコロナが少し落ち着き、経済も少しずつ上向いてきた感がありますが、11月以降に感染者が再び増加するリスクを考慮すれば、今の内から手を打っておくのが得策です。

2. 経済ダメージについて
 8/17の内閣府の発表によれば、2020年4~6月期の国内総生産(GDP)は、前期と比べ年率27.8%縮小しました。これは、戦後最大の減少幅で、リーマンショック時の-17.8%を大幅に上回っています。
 次に、世界全体に目を向けてみると、6/24IMFの発表によれば2020年の世界経済の成長予想は-4.9%(6/24 修正値)で、大恐慌以来の景気悪化だとしています。ちなみに、リーマンショック時が-0.1%ですから、世界的にも大幅に景気が悪化していることが分かります。

さらに、各国がコロナ対策として大幅な財政出動や金融緩和を実施したことで、各国の金融負債は爆発的に増加しました。
 日本の負債は、2018年時点で既に11.8兆ドル(約1,240兆円)あり、1位のアメリカの21.5兆ドル(約2,260兆円)に次いで世界で2番目に多い状況でした。また、対GDP比では米国(104%)の2倍以上ある237%と断トツのワースト1位でした。
 それが、コロナによってさらに増加し、日本の負債総額は28.2兆ドル(約2,960兆円)、対GDP比562%まで一気に膨らみました。ちなみに世界全体で見ても、コロナの影響によって対GDP比がはじめて100%を超えたようです。簡単に言えば世界全体が1年の稼ぎと同じだけ借金がある状態になりました。

しかし、なぜ日本だけ突出して稼ぎ(GDP)に対する、負債がこんなに多いのでしょうか?理由は2つあります。

1つ目の理由は、1990年から約30年の間、稼ぐ力が500兆円と殆ど変わっていないからです。分かりやすく言えば、父ちゃんの給与が30年間ずっと変わっていないのと同じです。一方で、それ相応の生活をしたいので借金は膨らんできました。ちなみに、同期間で米国の稼ぐ力は約2倍、中国は約24倍に高まりました。

2つ目の理由は、銀行が母ちゃんの実家に資産があるのを知っていて、評価を下げることもなくどんどん融資してくれたからです。ちなみに、この資産は国民の家計資産(1,900兆円(内現預金約1,000兆円)) と 民間企業の金融資産(1,200兆円)を指しています。しかし、ここまで借金が膨らむといよいよもって、身内の資産だけでは回らなくなってきました。これ以上、借金をする場合はギリシャのような財政危機のリスクを背負って、他国やIMFの支援を受けるしかありません。

つまり、もう後がないのです。本気で稼ぐ力を高めるか、生活水準を大幅に切り詰めるか、何れかの選択しかありません。

今は、有事ということで日銀が国債購入の上限を撤廃してまで、どんどんお金を市場に供給していますが、何れ金融の引締めが必ず起こります。どうあがいても、無い袖は振れないのです。

こうした状況を踏まえ、冒頭で紹介した1)借入を(利息補填がある今のうちに)増やすこと。2)徹底的した生産性の向上とコスト削減により、既存事業の利益率を高めること。を勧めているのです。

深刻な話題ばかり取り上げるのも気は進みませんが、現況と今後の不確実性を踏まえれば、賢明な対応策だと言えます。

いま景気が少し戻ってきた企業においても、日本が根本的に抱える構造的な問題は変わらないので、今後少なからず影響が出てくるハズです。借入の利息補填や、雇用調整助成金が活用できる今の状況をフル活用して、できるだけ早い段階で将来に向けた手を打つことをお勧めします。

【参考】
 ●「東洋経済の特性サイト」が、コロナの状況を以下の様に複数のからグラフ化していてとても分かりやすいです。
※厚生労働省が毎日発表するデータをもとに、動的にグラフを生成しているようです。 

●参考データ