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心と経営の力学 【No.41】 自然の摂理にみた経営の極意「流れ」

今年の4月から「自然栽培塾」に参加しています。
 目的は2つあって、1つ目は、実家の耕作放棄地の活用と安全な食糧を確保するため。
 2つ目は、自然界の法則の中に経営力を向上するヒントを見つけるため、です。

1つ目については、週末を利用して少しずつ実践をはじめています。

そして、2つ目については、予想通り自然界の法則の中には経営上のヒントが溢れています。といっても、全く新しい発見というよりは、「本質はやはりそこにあったか」と再認識させられることが多く、とても役立っています。

そこで、自然栽培の体験の中から特に経営にも役立つと思われることについて、自然栽培の紹介も交えながら、機会をみてお話していきます。
 まず、今回はとくに重要と思われる「流れ」についてです。

さて、自然栽培では、化学肥料はもちろん、有機肥料も一切使わずに作物を育てます。「えっ本当に?」と思われる方も多いかもしれませんが、私も最初は半信半疑でした。
 しかし、目の前の野菜はしっかりと育っています。
 この生育のカギを握っているのは、地中の微生物です。この微生物が肥料の代わりに野菜が育つための必要な栄養分を供給してくれます。山の木々が肥料を与えずとも育つのも、この微生物がしっかりと働いているからです。

ちなみに1gの土中には、約1兆個もの微生物がいるそうです。そして、森林と同じように畑の中の微生物が本来の機能を果たせば、外部から肥料を与えなくとも野菜は育つ、というのが自然栽培の基本的な考えの1つです。

それでは、この微生物を活性化させるためには一体どうすればよいか?ということになりますが、その秘密の1つが土中に水の流れを起こすことにあります。水が流れることで空気も一緒に運ばれます。それによって「好気性菌」の働きが活発になります。

一方、水が流れないとどうなるか?これは、雨水が溜まったバケツを放置した時を思い浮かべてもらうと想像できますが、そのうちボウフラがわいて、次第に異臭がしてきます。そして最終的には腐敗します。

畑や田んぼの土中でも水が流れないと、まったく同じことが起こります。「好気性菌」は働かずに、反対に作物の成長を阻害する「嫌気性菌」が活発になります。 

このため、自然栽培では、積極的に土中に水の流れをつくります。例えば、写真のように畑の周囲に水路を掘って、所々に天穴(深い穴)を設けるのも、その1つです。

ここで、よく考えてみると、文明や人々の生活の発展は、治水の歴史でもあります。4大文明しかり、利根川をはじめとする治水しかりです。
 記憶に新しいところだと、2019年に銃弾に倒れた「中村 哲」さんがアフガニスタンにつくった総延長25kmの用水路は10万人の農民が暮らしていける基盤を作ったと言われてます。

そう考えると、「流れ」のコントロールは人々の生活や生命の豊かさを左右します。

同様に、企業活動の場合は、人・モノ・カネ・情報の「流れ」のコントロールが、生産性や収益性を大きく左右します。

例えば、部材や製品(モノ)が流れずに停滞している間は、収益は生まれません。停滞している時間が長ければ、最悪の場合は不良在庫(埋没コスト)となります。1つひとつの作業や業務効率をあげることに努力する企業は多数あっても、全体の停滞時間を減らすことに注力する企業はそう多くありません。
 ちなみに、製造業では正味の作業時間や加工時間は多くても全体の2割程度だと言われているので、仮にこれらの時間が半減しても、全体の停滞時間を減らさない限りお金を生むまでの時間は殆ど変わらないことになります。

他方、各作業や業務においても作業者(人)の導線や動きがスムーズでなければ、生産性は当然低くなります。

また、方針や指示(情報)が不明瞭であれば、治水がしっかり行われていない水の流れと同様に、社員の思考や行動は定まらずに、思い思いの判断で好き勝手な方向に流れていくことになります。

このように考えていくと、社内の流れを意識的にコントロールすることで、収益性をもっと高められそうだと思いませんか?

その実現に向けた第一歩は、現場・現物・現実の三現主義にもとづき、社内の流れをじっくりと「観察」することです。また、必要に応じて状況をデータ(スループット、在庫回転率、歩留まり率、不良率、手戻り率・・等)を用いて客観的に把握することです。

そして、流れが悪いところが見つかったら、実際にカイゼンしてみてください。必ず収益性が向上するハズです。

なお、もし流れの悪いところが見つからないということであれば、このリンクにある「真・5S®ステージ表」で貴社の現在地をチェックしてみてください。ステージ3を満たせていないようであれば、必ず流れをカイゼンする余地があります。

さて、今回のコラムでは、流れの重要性についてみてきました。

よく考えると、私たちの身体も、空気と血液が適正に流れることで賦活していますよね。そして、この流れが不適切であれば、活力が低下したり、病気になったりします。企業活動もまったく同じです

貴社では、業務間や部門間の流れはスムーズですか?