心と経営の力学 【No.43】 働きやすい会社って何・・・? 行動に繋がらない会社の共通点
製造業のT社長が嬉しそうに、打合せの席に着きます。
「今期の経営方針の中に"働きやすい会社をつくる"というのを入れたんですよ」
「いいですねー、それで具体的に何をするんですか?」確認させてもらうと、K社長の表情が固まってしまいました。
T社長の会社に限らず
「顧客満足を高める」、「品質を最優先する」、「納期遅延をなくす」、「生産性を高める」・・・
といった、具体性を欠く方針を度々目にします。
まあ聞こえはよいですが、抽象的すぎて実際の行動に繋がるのか?疑問が湧いてきます。
そこで今回は、このような漠然とした理想状態をどう具体化し、行動に繋げるか?
簡単な方法を1つ紹介します。
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それは、
「望ましくない状態」を考え、それをひっくり返すことで「望ましい状態」を具体的に定義するという方法です。
望ましい状態は、今その人が置かれている状況や立場、あるいは価値観によって往々にして見解が分かれます。
例えば「働きやすい会社とは?」に対し、
経営者と、管理者と、社員では意見が異なる場合が多いでしょう。もしかすると、全員が違うことを言うかもしれません。あるいは、あまりに漠然としているため、答えに窮する人もいるでしょう。
(だからこそ、経営方針や行動計画を立てて社内のベクトルを一致させる訳ですが・・・)
一方、「働きやすくない会社とは?」と問われると、一気に答えやすくります。また、傾向も見出しやすくなります。
例えば
①「職場が汚い」
②「人間関係がギスギスしている」
③「仕事のやり方や範囲が曖昧」
④「自分の仕事がどう評価されているか分からない」
⑤「他の人に気軽に質問や相談ができない」
⑥「忙しいのに助けをお願いできない」
⑦「急な仕事が多く、予定を立てられない」
・・・・
こうして、出てきた問題をひっくり返せば、望ましい状態が具体的に見えてきます。
さらに、これに行動指針や数値目標を設定をすれば、実際の行動に繋がりやすくなるし、管理もしやすくなります。
なお、全部に取組むのではなく、この中からインパクトが大きいテーマを1個、多くても3個までに絞って取組む方が途中で挫折しにくくなります。
ちなみに、何故このような方法がよいのか?と言うと
人間の脳は、身を守ったり、不快を避けることを最優先するように作られています。
このため、望ましい状態を定義するより、不満や不快が生じている望ましくない状態の方がイメージしやすいといった特性があります。
さらに、理想的な状態を手に入れるより、不満や不快を解消するための行動力の方が3倍以上つよく働くと言われています。
これは、健康診断のために病院に出かけるのは面倒でも、不調や痛みを感じれば直ぐに病院に行きたくなる、といった場面を思い浮かべてもらうと体験的にもよく分かるでしょう。
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以上ここまでが、漠然とした理想状態を具体化し、実際の行動に繋げるための方法でしたが、如何でしたか?
冒頭のT社長は、最終的にこの方法を使って他の経営幹部とも話し合い、「社員が話しやすい環境をつくる」という方針に設定しなおしました。
また、具体的な行動として、「経営幹部が朝一番で社員に声掛けする」、社員が相談しにきた時の第一声を「どうした?」にする・・・等の具体的な行動計画と指針をつくりました。
貴社では、具体的な行動につながる方針や計画づくりをしていますか?
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最後までお読みいただきありがとうございました。