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心と経営の力学 【No.46】 社内活動を停滞させないコツ

2020年1月、N社では5S活動を始めようとしていました。そして、実際に幹部を集めた社内研修を開き、最初のステップ「整理」を始めてから2ヶ月後にコロナが流行り出しました。残念ながら、訪問指導が難しくなったため、以降の研修は一旦全てキャンセルになりました。

先日、そのN社から「次のステップに進みたいので5S研修を再開して欲しい」との連絡がありました。現況を確認すると、「整理活動は約2年のあいだ続けていた」というから凄いなぁと感心しましたが・・、
 一方で「活動がマンネリ化」し、ただ何となく活動しているだけの状態になっているため、この状況を何とかしたい!というのが再開を希望する理由でした。

5S活動に限らず、一度始めた活動がその意義を見出せなくなり形骸化したり、社員や部門間によって活動レベルがバラツクというのはよく聞く話です。
 また、活動が続いているだけましで、いつの間にか自然消滅していた、なんて話も耳にします。

こんな時に、お奨めするのが『活動の目的』を再認識することです。
 何だそんな事か・・、と思われたかもしれませんが、ここで大事なのが目的の階層を意識することです。

どんな行動や活動にも、(意識しているか否かに関わらず)さらに上位の目的を見出すことができます。そして、どの階層の目的にフォーカスするかによって、活動の意義は自ずと変わってきます。

このことについて、ピーター・ドラッガーは、3人の石切り職人を例に次のように語っています。

旅人がある街で、石切り仕事に精を出す職人を見かけました。何をしているか尋ねると、
この職人Aは「カネを稼いでいるんだよ」と答えます。

旅人が暫く歩いていくと、また、同じ仕事をしている職人を見かけます。念のため何をしているか尋ねると、
この職人Bは「国一番の石切職人になるために、技術を磨いているのです」と答えます。

再び、旅人が暫く歩いていくと、また、同じ仕事をしている職人を見かけます。念のため何をしているか尋ねると、
この職人Cは「村人の皆さんの憩いの場所となる、教会を建築しているのです」と答えます。

3人の職人は
見かけ上は同じ仕事をしていますが、目的が異なるため、意識している時間軸や視野の範囲に差が生じます。
図にするとこんなイメージです。

次に、もう少し身近な5S活動を例に考えてみましょう。

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5S活動の目的のうち、最も分かりやすいのは(ステージ1)「安全」の確保です。
 例えば、通路に物が置かれていると躓いたり、高いところに物が置かれていると落下して怪我をするリスクが高くなります。
 こうしたリスクを軽減し、「安全」な職場環境を創ることを最初の目的に設定すると、誰にでも分かりやすく活動を行う納得感も高まります。

しかし、一旦安全な職場環境ができあがり、維持されるようになれば、これ以上活動を続ける必要はなくなります。参加者は活動の意義をだんだんと感じなくなるので、活動は形骸化していきます。ある意味、至極自然なことです。

この段階で、上位の目的(ステージ2)「気持ちよく働ける職場環境」を意識するとどうなるでしょう。
 物が綺麗な状態で理路整然と置かれてたり、掲示がされている職場は気持ちよいものです。安全かつ、美観も備わった職場になります。社員が気持ちよく働けるのはもちろん、来社したお客様や取引先からの印象もよくなります。

そして、これが出来たら、さらに上位の目的(ステージ3)「機能的な職場環境」に意識を向けます。
 物が能率的にかなった所定の場所に置かれていると、誰もが必要な物を直ぐに見つけたり、戻すことができます。情報(共有)についても同様です。

スーパーやディスカントストアは機能的な職場の代表格ですが、私たちは初めてのお店でも買いたいものをたいてい直ぐ見つけることができます。こうした職場は、見た目の印象に加え、生産性の高い職場となります。

ちなみに、一般的にはここまでが3S活動で目指す職場環境となります。

5S活動の場合は、さらに、その上位の目的(ステージ4)「効率的かつ気持ちよく働けるようにマニュアルやルールを整備し、共有できる環境」を整えたり、
 (ステージ5)「皆が決めたことを愚直に実行する組織風土や仕組みを創る」といった上位目的があります。
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如何でしたか?

目的(戦略)が明確になればなるほど、有効な手法(戦術=1000術)が見えてきます。そのため、状況によって柔軟に打ち手を変えることもできます。
 逆に言えば、目的を見失ったり、目的を低いレベルに設定したままだと、視野が狭くなり打ち手は限られてきます。

このため、もし始めた活動が停滞している、形骸化してきたということであれば、いま一度目的に立ち返ってみるとよいかもしれません。
 そして、見えてきた目的に対し、さらに『それって、つまり何のため?』と質問を繰り返していくことで、さらに上位にある目的も明確になってきます。

ぜひ、試されてみてください。

 今日も最後までお読みいただきありがとうございました。 

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